近い近い近い近いよ雲雀!
 地球一周旅行から帰ってきた私の心臓は、今度は宇宙に行ってしまうんじゃないかってくらいエンジンかかってた。








 男に抱き締め…いや拘束?これ拘束だよね。 とにかくこんなん初体験です。
 もう、もう、こいつが何したいのかと考える余裕もない私は、状況に耐えられ なくてモゾモゾと動くことしかできなかった。

「動くな」

 それすらも咎められる。
 お、お願いだから喋らないで、息が耳に…(お姉さん本当に泣いていいかな)

「…やっと見つけたよ」

 ニヤリと、雲雀が不敵に笑った。え、何を、と思って私も窓の外をこっそり見 ると、数人の生徒を見つけた。
 女子も何人かいる。 それぞれ何か見張るように立っていた。
 そして丁度そこには、去年卒業した先輩達の記念に植えた梅の木が数本あるのだが、その木の一番近くにいる男が
 手に小さなノコギリを持っているのが分かった。     



     犯人だ




 頭が瞬時にそう理解する。探していた犯人がそこにいる。
 許せない!
 私は、身体が一気にカーッと熱くなり雲雀の手をなぎ払うと足を窓枠にかけ、飛び「待ちなよ」「ぎゃ!」
 ーーー…おりようとしたが雲雀の手によって、地面に叩き返された。

「きた、汚っ!男子便所じゃん、男子便所じゃんここぉ!」
「僕はいつもちゃんと手を洗って出る」
「聞いてないし、そうゆう話でもないから!」
「…いいかい、美化委員長」

 雲雀が人差し指を口にあて、若干静かに話しだした。

 あそこにいるのは君も知っている通り、例の犯人達だ。
 どうやらこの事件そう 大したことでもないみたいだし(生徒会長が困ってるというのにこいつは大した ことないって言った)、
 僕は聞かず関わらずだったんだけど、つい先日お気に入りの桜の木を切られてね。
 僕もかなり腹を立てているんだ。 あれ以来、安眠できやしない(桜の木の下じゃないと安眠できないというのか。 ていうか君、中学の時は桜苦手じゃなかった?あれ?) よって、あの犯人達は

「僕が倒す」

 と言うと颯爽と足を窓枠にかけると、雲雀は外に飛び出した。
 呆気にとられた 私は、瞬時に反応できず。 が…つまり、憂さ晴らしに自分が倒したいってこと?私に先越されるのが嫌だ ? 
 私だって、恨みつらみあるのに…

「ず、ずるいよ雲雀―――!!」

 急いで私も後を追いかけた。








 所変わって、ここは生徒会室。
 床にはたくさんの書類が散らばっている。
 数枚の書類と各委員会が提出する記録誌を手に持った生徒会長の額には、汗が一つ流れていた。

「信じられない…まさか、これが犯人の目的?」

 手を震わせると、生徒会長はこうしてはいられない、と行った風に書類を机に置くとドアに向かった。
 私は風紀委員長や と違って、力はない。
 だからこそ、早くあの二人に伝え ないと…風紀委員長が聞いてくれるかは分からないけれど…

   ガチャ!

「どこに行くのかな…生徒会長さん」

 目の前には、よく知る人物が立っていた―――…








「遅かったね」
「また負けたーっ」

 頭を抱え込んでしゃがむ私。悔しい! またしても風紀委員長に手柄を横取りされてしまった!
 悲しいかな、私が追いついた時はもうすでに雲雀が片付けた後だった。ちょ、早すぎ!
 女生徒はある程度手加減されているようだけど、皆ひどいありさまで自然と私や眉を寄せた。
 今はほとんど皆失神していてたまに何人かが「ぅぅ…」とうめき声をあげている。
 …私は雲雀のこういうところが気に食わない。学校は生徒ありきだというのに!

 梅の木をみると、ノコギリで少し切られていたけれど、これなら大丈夫だと安心した。
 後ろを見ると雲雀は、一人一人髪をあげて、顔をのぞいていた。生徒がうめく。

「雲雀 !! もうちょっとさぁ、手加減てものを」
「なんか、知っている顔があるようなないような…」
「先輩の話聞いてないよね」

 なるべく、雲雀の顔を見ないように側にいって、雲雀が持っている奴の顔をのぞいてみた。
 雲雀にトンファーで殴られたのか右の頬が赤く腫れていたが、よくよく見ると 中々可愛い系のハンサムな子だった。

「こんなに痛めつける必要ないじゃない…せっかくのイケメンなのに…」

 と言うと、…雲雀さん何か私悪いこと言いましたか? 雲雀は手をパっと離し、 男の子はごつい音をたてて地面とキスをした。
 言った側からこいつは…!
 性格の悪さを再認識させられた瞬間だ。

「こうもしないとこいつらは繰り返すだろう?」
「だからといって校内暴力は」
「知っている顔があるようなないような」
「だから話を聞きなさいよね!…あ」

 雲雀がまた隣に倒れていた女の子の顎を持って顔をあげさせた。
 あ、いいな、 とチラっと思ってしまった考えをすぐに打ち消し、私もまじまじとその子の顔を見ると知っている子だった。

「この子、緑化委員の子だよ」

 ほんのたまーに、中庭の花を手入れしている。それもさっさと終わらしちゃっ て帰る子なんだけど。

「あ、あれっ、こっちの子も緑化委員だっ!あ、あの子も!」
「7人中、5人が緑化委員、か…」

 雲雀は何か思案しているように目を彷徨わせる。
 私は何が何だか分からない。この三人は緑化委員なのに、花や木を痛めつけて いたんだろうか。
 だってそうすると、活動とは全く逆の行為じゃないか。
  花や植物が好きで緑化 委員になったんじゃないの…?
 今までのこいつらの仕業を考えると、とても許せたものじゃないけれど、私はなんだかとても悲しくなってしまった。
 
 突然、雲雀が緑化委員の女の子の顔をデコピンした。しかし女の子は何の反応 も示さない。
 そのまま顎にかけていた手を離し、倒れている二人目の緑化委員の腹を軽く蹴った。(こいつ、鬼畜だ)

「ぅっ」
「起きろ。ねぇ、この主犯って誰?別にいるんだろ」
「いって…てめ、覚えてろよ、ぜってーいつか」
「主犯だれって聞いてるんだよ」

 がしっと 雲雀が再度腹を蹴る。

「だっ!!…し、しらねーよっ俺、お金もらえるって他の緑化委員に聞いて、 それでおれ…」
「あ、そう」
「ちょっ、雲雀!!」

 蹴り2発に最終的にトンファー一発
 私が止める間もなく男は完全にのびてしまった。
 私は雲雀を止めようとした手をゆっくり下ろした。
 雲雀は文句を言わない私を不思議に思ったのか振り返って、じっと見つめた。

「…なんか…ちょっと悲しい」
「…何で君が悲しむの」
「お金目当てで…やったのかと思って」

 卒業生達が一生懸命運んで埋めたものをお金のために切っていいわけがないのに。
 顔を見られたくなくて、プイを私は後ろを向く。
 雲雀が腕を掴んだのが分かった。

「案外、昔から君は涙もろいよね」
「うるさいなぁ、雲雀のせいで中庭掃除しなくちゃいけないから悔しいんだよ 」
「僕がやらなきゃ君がやったくせに」
「うるさいなぁ」
「僕は君のその学校に対する気持ち、中々気に入ってるよ」

 この学校おたくめ。
 そう言ってやりたかったけれど 掴まれた腕が全然痛くなくてとても暖かったから…。
 何で、こいつは時々、こんなにも……


 その時突然、
 私の頬にするどい痛みが走った。









  1 2 3 4 






         (070208)なんだこれ。全然名前変換がない…