「風の谷の〜ナウゥシカ〜♪」








 ナウ◯カは私の理想の少女だ。
 私の夢は緑溢れる学校を作ること、そしてそれには汚れなんて必要ないと思ってる。

「まぁいこーんーだらぁー」

 がら、ぴしゃん。がら…

 一つ一つ教室を見てまわる。今は放課後で生徒はほとんどいなかった。遠くで 部活のかけ声が聞こえる。
 憎っくき犯人はもう帰ってしまったのだろうか。
 私は学校が好きだ。
 私の両親は中学・高校教師で、小さいころから私は学校に 入り浸っていた。
 もうここが私の家のようなものだった。 だから汚れているところを見ると許せない。
 私だけでなく、皆が気持ちよく学校生活送れるようにすることもモットーなのである!

 がら、ぴしゃん。がら…。

 風紀を正す、あいつ、雲雀と気が合うんじゃないか?と生徒会長は言うが、全 然そんなことはない。
 確かに、やっていること、目指すものは似ている。
 けれど、私はあいつのやり方は好きじゃないし、何より、委員達のスタイルが…受け付けない
 さらに言えば私はあの雲雀の性格が大嫌いだった。
 あの、人を人と思わないような態度に眼差し。
 いつか、いつかあの生意気な目を見下してやりたい…!
 今回の犯人は、必ず風紀委員より先に捕まえてやるー!

 ガラ、ぴしゃん…  

 だが犯人はやっぱりというか、どこにもいなかった。







 ふと、とぼとぼと廊下を歩いていたら、独特の匂いが漂ってきた。これはまさか…男子トイレからだ!

「こらぁ!校内で何煙草吸ってんの!」
「うおぉぉぉっ、なっ、てめーっここ男子便所だぞ!」
「きゃー」
「ううるさい!男がキャーとか言うな!あっほらっやっぱり煙草の吸い殻とか カスとか床に落としてる! 誰が綺麗にすると思ってんのよーっっ」
「ああ?うるせぇな」
「犯すぞー」
「黒帯をなめるんじゃないわよ」

 ぴっと手刀を下して煙草をはたく。煙草は勢いで洗面所に飛んでいきジュっと音をたてて火が消えた。


「ふざけんじゃねぇ!うぜぇっこのあ…ま………」
「あ」
「え?」

 二人の男子生徒は恐怖で顔を強ばらせると、急に後ろにあるでかい窓をガラリ と開けて我先にと逃げていった。
 あれ? 私そんな恐がらせたかな。まだ何もしてないのに。
 風紀委員長と違って、私は暴力は使わないか らあまり恐れられていない。
 教育に厳しい両親は私にあらゆる武道を習わせてくれたけれどその力は人を守るためにあると
 思ってます。暴力ふっかけてくる奴は別ですけどね!
 でも大体そうゆう力が必要なほどガラ悪いやつらはいつも 先に風紀委員が取り締まってくれてたけどね! ムカつくけど、そこは助かる。ムカつくけど…顔はいいんだよなぁ。

「ねぇ」

 ああ、そうださらにムカつくことに声も最高に好みポインツなんだよな、ちょ うどこんな…
 んん?


「こんなところで何してんの、美化委員長」
「ああああああ!ふ、風紀委員長…!」

 その場で硬直する。だって!雲雀が真後ろに!しかもここは男子便 所!

「君、とうとう変態行為を…しかも煙草吸ってるし…。罰則だ。」
「違う!私なわけないでしょーがぁ!」
「言い訳無用」

 びゅっとトンファーが後ろで振り下ろされる音がした。咄嗟にそれをよけ、雲雀の背後に回る。
 よっしゃぁ!背後とったり!
 今までの恨みつらみを込めて、私は足をふりおろ した!――が、簡単に雲雀によけられ
 トンファがまた落ちてきた―― …

 ガッ!!


「…まだそのださいの使ってたの」
「うるさい!」

 なんとかぎりぎり懐から取り出した鎌で食い止める。でも…しまった…見てしまった…やつの 、顔を!!

「あ、トマトだ」
「う、ううううる、さ」

 心臓が破裂しそうなくらいにばくばくいってる、何でこいつは、こんなに…!
 最悪なことに、雲雀は私が雲雀の顔に弱いということをよく知っている。
 知っているからこそわざと、こいつは

「死ね」

 爽やかな笑顔で笑いかけてくるんだよ!! むかつくぅっっ

 がつん!

「いっ…」
「やっぱ君むかつく…直撃避けるなんて…」

 こっちの台詞だ!痛い!

「…さっきの奴ら、煙草常習犯なんだよね。今度かみ殺さないと」

 しかも犯人ちゃんと分かっててやってる!? な、なんなのぉぉ!痛い!(なんか むかつきすぎて涙が出てきそうお姉さん)
 私は雲雀を真っ正面から見ると、うまく身体が機能しないので、後ろ向きだ。
 まだ煙が出ていた煙草を雲雀が手にとって個室のトイレに流した。意外と几帳面だ。
 こんな時間に、ここにきた雲雀は私と同じようにこの匂いをキャッチしてここ まで来たのだろうか。
 それかふつーに用を足しに来たのかもしれない。  

「すいません私出ていくんでどうぞ遠慮なく用を」
「バカじゃないの」
いっだぁっ!!

 またトンファーをゴっとやられた。いくら私でも年上の私でも堪忍袋の緒が太い私でも切れるよ!

「やっぱ雲雀!!あんた一度生まれなお」
「聞かなかったことにするから静かにして」
「んむっ」

 急に後ろからのびてきた手で口を押さえられ、そのまま後ろに引っ張られる私 は何かにドンっと当たってそのままぴたっと止まった。
 
 え?

 よく見ると、ドンとあたったのは雲雀にだった。白い、シャツが目のすぐ横に 見える。

 え?
 
 少し上を向けば、雲雀が真剣な顔をして窓から外を眺めていた。
 きりっとした 生意気そうな目に、薄い、ピンク色をした唇。

 え?

 手の温度が、直接唇に伝わる。


  え、えーーーーー!!! 雲雀―!!!?


 ドッギュン


 私の心臓は地球を駆け巡ったに違いない。





く!!

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