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「きりーつ、れいっ。先生さよぅなら!」 『先生、さよーなら!』 「はい、さようなら。さっきも言いましたが変質者には十分気をつけて皆帰るようにね」 はーいと数人が返事して、ほとんどがまずは一緒に帰る友達のところに駆け寄っていく。教室と廊下は一気に騒がしくなった。 季節は三月でもう少しで進級だった。 僕と は2年のころからずっと同じクラスで、来年は5年生になる。 ワイワイと群れてるやつがうるさいから僕はいつも真っ先に教室から出る。 さよーならなんて誰にも言わない。言う必要もない。 ガラっとすぐ近くにあったドアを開け、まだ数人しかいない廊下を歩く。 ランドセルはトンファー仕込むのに邪魔だから背負わない。 ていうか持ち歩いてない…ていうかランドセル自体もう持ってない。 さっさと出て下駄箱に着いたあたりでやっと が僕に追いついた。 「ひばり君、一緒かえろー」 「やだよ」 「いっつもそれ言うね、あはははっ」 「うるさいな」 が、靴に履き替えたのを見計らって僕はまた歩き出す。 は歩くのが僕より遅いから必然的に数歩遅れる。たまに小走りして距離を 保っているようだった。 は僕と違って、ピンクのランドセルをしょっていた 。 ちゃんと律儀に机の中のものを持ち帰っているようで、がちゃがちゃと音が鳴 る。 たまに、 がランドセルをしょっているんじゃなくて、 が背負われているように見えた。 校庭をつっきぬけ、校門を出るとこで学校の教頭で最近頭が少し薄くなり始めた山田が落ち葉を掃いていた。 僕はその前を素通りする。少し山田がびくっとしたけど気にしない。教師は皆そうだ。生徒である、まだまだ子どもの僕が恐いだなんておかしいよね。 が山田に気がついて先生さようなら、って律義に挨拶をかわしていた。 「さようなら、気をつけて帰りなさいね。 さんはいつも元気でいいね。一人で帰ってるのかな?」 「はい!ありがとうございます、あへへっ。 は一人だけどヒバリ君のあとについていつも帰ります」 「(言ってて切なくならないのかな…)」 「そ、そう…仲良く帰りなさいね。」 「はーい」 「…余計なお世話」 僕と はそのまま家に帰った。なぜかしつこく山田の視線を感じたけれどその時は生徒を見送る教師として僕たちを見ているのだろうとしか思い付かなかっ た。 どうしてその時、気がつかなかったんだろう。山田の思惑を。 でも、気がつかなかったおかげで今こうして僕の計画を遂行できるわけだけど 。 僕の家と の家は近い。僕の家の方が学校側だ。 はいつも元気な言葉で僕にお別れの挨拶をする。 「また明日ね!ひばり君!ばいばいっ」 「ん」 一言だけれど、僕が返事を返すのは だけだって気がついているだろうか。 案外、 は抜け目のない性格をしていると最近知ったから、気づいているのかもしれない。それはそれで癪だ。 次の日――… 「昨日また変質者が出たそうです。だから皆、あやしい人見つけたらすぐに助けを呼ぶ、または近くのおうち に駆け込むなり交番まで行くように!なるべく一人で帰らず、家の近い者同士で帰るようにしましょうね。 はい、それじゃあ帰りの会はこれで終わりです」 「きりーつ!礼っ、先生さようなら」 『さよーなら〜!』 「はい、さようなら、気をつけてね」 今日も僕はだれとも挨拶を交わさずに真っ先に教室を出た。 「ひっばり君、今日一緒に先生が帰れだって!やったね!」 「いつもと変わらないじゃない」 「違うよーほら、雲雀くんが横に並んで一緒帰ってくれてるもん」 「…」 はいつも、恥ずかしい言葉をはずかしげもなく言う。口に出して言わないで欲しいことも構わず言うので僕は不覚にも顔が赤くなりそうだった。 たまに が馬鹿なのは確信犯だろうか。と疑わしくなる一件だ。 僕たちは校庭を横ぎって校門を出た。落ち葉が散らばってる横を通りながら は横に並んで歩けるのが嬉しいのか僕の顔をじっと見ながら色々話してくる。 僕は が転ばないよう道路に石や空き缶はないか無意識に探していた。 「こうゆうの変質者様様って言うんだね!いつも出てきてくれればいいのに、でもそしたら変質者さんも大変だよね、どうし」 「危ないだろ」 こいつ変質者分かってない、絶対分かってない。なにこの喜びよう。変質者に あ ったらむしろ喜びそうな勢い。今までよく誘拐とかされなかったものだな。 誘拐犯の方が、こんな子ども気味悪がって近づかなかったのかもしれない。 「そうだっヒバリ君気をつけないとね、何かあったら がまた駆け付けるからね」 「…僕?」 なんで僕? らが駆け付けて来ても邪魔なだけなのに。 「だってひばり君、お顔きれいだもんかわいいもん、隣りんちのおばさんもね、 とひばり君が学校から帰ってくるの見てねまるでドードー鳥とアルマジロみたいねって」 「……」 どんな例えだよそれ おばさんて、僕の家から3件となりの家?なんかいつもスーパーの袋持ってるおばさん?例のごとく首のあたりに貼付けているピップエレキバンが無償にむかつくおばさん? 「あ、だからね、ひばり君気をつけないと!マスクとグラサンと帽子かぶってるおじさんには要注意だよ」 「ふーん」 「帽子の色は深緑でグラサンの色は茶色だよ」 「詳しいね」 「昨日 、見たからね。だからおうち近いひばり君があぶないかなぁって」 「ふーん………………んん?」 え、会ったの? 「ちょ! !まさか…昨日出た変質者に会ったのって…」 「さぁ? のことかなぁ?でも面白かった!」 おぃぃぃ!どこまでバカなんだこの子! 「もし見つけたら、助けを呼ぶか避難するって言ってたでしょ!?」 「だってー面白かったんだもんおじさん裸だったんだもん小さかっ」 「黙れ」 「あい」 になんてものを…くそおやじ…! 「…大体 、君は無防備すぎるんだよいつもいつも。こないだだって知らないやつからお菓子もらおうとしてたし、その前はだまされて落とし穴なんかにはまるし…君は僕がいなきゃだめなわけ?僕だってずっと側にいられるわけではないのだからね。いやまぁでもが一人前になるまでは仕方ないから見ててあげてもいいけどね。光栄に思え。だから、もう少し注意力と常識をだねぇ… 」 僕は足を止めて に説教を始めた。たまにこうでもしないとこの子の悪い癖はいつまでたってもなおらないからね。ふだんあまり喋らない僕だからか、一度説教を始めるとなかなか止まらなかった。そして長く喋らない僕だからか、僕自身びっくりな内容をさらりと言ってる気がするが無意識にスルー。うそ、意識的に。 いつのまにかそこがぼくの家の近くで、 がバイバーイ!と言ってさっさと家に帰ってしまったのに気がついたのは遠くから笑い声が聞こえてからだった。 「分かった? …、…?」 あは、あははははは 「 の笑い声が聞こえる…」 顔をあげて道の先をみる。20mくらい行った先は十字路になっていて はそこをいつも右に曲がっていく。 姿が見えないけれど、曲がったすぐ先に がいることがわかった。何をあそこまで笑っているんだろう。 まさか?まさか…! 悲鳴ならず笑い声で焦りを感じ走り出す僕はどこかずれてるなぁと思いつつ の元へ向かった。 「おじさんこんちゃー!昨日も会ったねーっ」 「そ、そうだね、ねぇ ちゃんそんなにおじさんおかしいかい?」 「だってぇーまだ全然寒いのに今日はコートいっちょの裸で外歩いてんだもん 。おかしいよぅ、あははっ」 「そうかい、それじゃおじさんと二人でもっとおかしいことしないかい?」 「いいよ〜」 「じゃここじゃできないからついておいで」 「う〜ん知らないおじちゃんについてっちゃだめって…あ、でもおじちゃん昨日も会ったもんね、 うん、じゃぁ ついて」 「 のばか!」 パッコーン!! 「ふぎっ」 カランカラン… 投げたトンファーが見事 の頭に当たった。 相変わらずいい音がした(そう、例えるなら上等なすいかだ) 僕はトンファーを拾ったあと、目の前にいるコートを着た変態をにらみ付けた 。 「…かみ殺す」 「ひっ…」 男はぺたんっと尻餅つき、その時、深緑の帽子がぽろっと落ちて特徴ある頭があらわになった。とても寒そうである。陽の光があたって少しまぶしかった。 これは…もしかすると…。とても見覚えのある可哀想なハゲ頭。 「ねぇ、ちょっとグラサンとマスクもはずしてみてよ」 「わわっ」 男は逃げようと腰あげかけたから僕は―… シュッ ピピっ 一瞬にして間合いをつめてトンファーでその二つを取り除いてあげた。 カ シャン… サングラスがスローモーションに落ちていく 「ぅあ、…」 「あ、やっぱり」 「っあー!」 「教頭先生だっ、こんにちはーっ」 「こここんにちは、あ、 さん…雲雀くん…」 こ い つ 「い、いい子だね、二人とも…今日あったことは誰にも…!」 かみ殺す!!! ガゴン!!ゴン! 「げぁっ」 べしゃり 山田をかみ殺した僕は、いい考えが浮かび警察には届けなかった。 そもそも話しをよく聞いてみると(ぼくじゃない。 がやっと口が聞ける状態の山田に色々質問した。バカなのか鬼畜なのか。)今騒がれてる変質者とは違うということが分かった。 は昨日変質者に会ったとは言ってたが、教師だけでなく親にも連絡してい ないそうだ。なら今朝担任が言った変態とは別 に違いないのだ。 山田は前から に目をつけていたらしい。どおりでこの日、校門前で山田を見つけなかったわけだ…色々と準備するために先回りしたに違いない。 そして僕たちは が持っていた携帯で記念写真を撮った。 いちお証拠のつもり。 はほんとに記念のつもり。 それからは毎日、ぼくは遠回りになるけれど の家まで見送りをすることに し た。この子のまわりにはトラブルが絶えないしね。 そのトラブルを頭のいい僕は手玉にとっていき、おかげでますます僕は、学校を牛耳りやすくなったわけだ。学校だけではなくなってきたけれど最近は。 「ねぇ、山田」 「はぃっお、お願いだから警察には!」 「じゃあ、なんでも言うこと聞いてくれるよね」 「もちろんです!」 「ほんと君、プライドも何もないね」 「あはははっ教頭せんせーっこの写真面白い顔してる、ねひばりくんみてこれ っおもしろいかおして」 「君はもう少し知恵つけようね」 そして春 「やったねー!ひばり君またおんなじクラスだね!」 「そう 」 僕たちは一緒にクラスに向かった。 途中山田とすれ違う。山田は誰がみても分かるくらいに体をびくっとゆらして早足でどこかに行った。彼はきちんと僕の計画通 りに動いてくれたようだ。 まぁ、学校くれって言ってるわけじゃないし、こんなこと可愛いもんなんだけど。 かれのお陰で来年もぼくと はきっと同じクラスになるだろう。 そして帰り、いつものように僕は誰とも話をせず一番先に廊下に出る。 靴に履き替えるところで が追いついて一緒に帰ろうと誘う。僕たちは通学路を歩く。たわいもない話しを が喋り続ける。 は、家についたらやっぱり大きな声で 「また明日ひばり君!」 て言った。 誰にも挨拶しない僕だけど 「また明日、学校でね 」 |
(だって言う必要多いにあるじゃないか) だったら、明日も会ってあげてもいいかな、て思うんだよ。 07,01,28 |